一口に遺伝性疾患と言っても、多種多様なものがあるのでその言葉だけでは全体像を把握することはできません。基本的には、「単一遺伝子疾患」「多因子遺伝疾患」「染色体異常」の3つに分類されます。
遺伝子とは、古典的な定義では染色体上の特定領域のことです。つまり染色体異常が最も大きな範囲を持っていると考えてよいでしょう。
染色体には人間の場合、22対44本の常染色体と1対2本の性染色体があります。この数が多すぎたり少なすぎたりすると染色体異常の遺伝性疾患が起こるというわけです。
染色体は1対2本が基本セットです。しかし、時にはその数が1本になったり、3本や4本といった数になったりといった異常が起こります。1対2本のはずの基本のセットが3本になるものを「トリソミー」、1本しかないものを「モノソミー」と言います。
新生児に最も多い遺伝子疾患は、21番染色体が3本になる「21トリソミー」です。この病気はダウン症候群としてよく知られているものですが、染色体異常のため、2020年の段階ではまだ治療の方法は存在していません。
ただし、早期発見によって専門の教育を施すことによりQOLを改善することは可能とされており、実際にも行われています。
性染色体異常もいくつかありますが、例えば通常X染色体とY染色体が1本ずつの男性に対して、Y染色体が1本多いXYY型はスーパー男性と呼ばれます。この場合、異常のない人との差異はほとんどなく、気づかれないことも多いようです。
また、XXが普通の女性に対して、X染色体が1本多いXXX型のスーパー女性と呼ばれるケースもあります。これもほとんど正常な人と変わりません。このように、症状として現れるものには大きなばらつきがあるのです。